心が免疫系に与える影響(3)

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精神生物学―心身のコミュニケーションと治癒の新理論』では、「肉体の病気を、心や精神的な方法を用いて治療することが本当に可能なのか」という疑問に、現在得られている科学的知識をもとにして応えようとするのである。しかし、まだ答えへの道のりは遠い。

心の有り様ががん、がんの予後に影響することは「経験的」には確からしいと思われている。多くの医者もそのように言う。いまでは、心(脳)から、からだ、細胞、遺伝子にいたる情報が「情報伝達物質」によってコントロールされていることが分かっている。これこそがホメオスタシスの実体である。

IL-2などの伝達物質を大量に投与すれば「魔法の弾丸」のように効果があるだろうとする説は、残念ながら効果がなかった。それは混雑する劇場で「火事だ!」と叫ぶようなものだった。複雑系である人体に対して、大量の情報を与えれば良いというものではない。では、どうすれば心の有り様でがんをコントロールできるのか。イアン・ゴウラーやノーマン・カズンズがその実例を示している。

また、シュレベールは『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』で、よりわかりやすく解説してくれている。彼もまた奇跡的回復の事例を体験したひとりの患者であった。彼らの著作から多くのことを学ぶことができるだろう。

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本書から重要だと思ったことを抜き書きしておく。


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  • 「精神的」ストレスのもとでは、脳の大脳辺縁ー視床下部系は、心からの神経信号をからだの神経ホルモンである「伝達物質」に変換する。この伝達物質が内分泌系に指令を出して、ステロイドホルモンを放出させる。ステロイドホルモンはからだの各種細胞の核内に達し、遺伝子の発現を調節する。そしてこの遺伝子が細胞に命じて、代謝、成長、活動レベル、性衝動を調整し、また病気のときも健康なときも免疫反応を調整する、種々の分子をつくらせるのである。心と遺伝子のつながりは本当に存在するのだ! 心は最終的には、生命をつかさどる分子の創出や発現に作用を及ぼしているのである!
  • これまで無視されてきたプラシーボ反応が、じつは、心身のコミュニケーションと治癒に関する新たな認識を気付く有効な手段だった。
  • ライト氏の事例が私たちに語るのは、役にたたない薬クレビオゼンの効き目に対する絶対的な信頼こそが、心身のコミュニケーションと治癒に関わるこれら全ての主要なシステムを活性化し、治癒をもたらすプラシーボ反応を高めたということである。
  • すべてのホルモンはからだのある部分から他の部分へと情報を運ぶ「伝達物質」として機能することが分かっている。これらの伝達物質の多くは、生物学的な代謝や成長とともに記憶、学習、行動、人格といった心理学的プロセスをも調整している。
  • 交感神経と副交感神経の二つの神経系に分かれる自律神経系は、病気あるいは治癒をもたらす心身のコミュニケーションやプラシーボ反応の主要なシステムの一つなのである。
  • 否定的な生活状態と態度が、自律神経系、内分泌系、免疫系による心への作用を介して、人を病気や死に至らしめる可能性がある。鋭い医師には、その逆もまた真であることが分かっている。。肯定的な考え方が非常に重い病気に対してさえ治療効果があることに気付いている。ノーマン・カズンズほど、自らの経験から詳細かつ雄弁な実例を示してこの真実を描き出した人は他にはいない。
  • カズンズは、前向きの態度と感情は、元気を取り戻し健康を促進する肉体の生化学的作用に影響を及ぼすことを強調している。これらはプラシーボ反応の核心なのである。プラシーボは身体の内部に住む医師なのだ。
  • 薬の治療効果の55%はプラシーボ反応によるものであり、この数値は一貫している。
  • すべてではないにしても、多くの治癒プロセスに55%のプラシーボ反応があると思われる。このことは、障害、症状、病気のいかんに関わらず、心身のコミュニケーションによる治癒を説明する共通のメカニズム、あるいはプロセスが根底にあることを暗示している。
  • 伝達物質は、健やかなるときも病めるときも、心、情動、行動、そして遺伝子の発現を結ぶ心身のコミュニケーションの、究極の「核心」なのだ。
  • 伝達物質と細胞のレセプターとのコミュニケーション・システムが、心身相関的な治癒、催眠療法、ホリスティック医学全般の精神生物学的な根拠なのである。信じられないかもしれないが、心が遺伝子の活動を調整する多くの精神生物学的な経路については、すでにある程度分かっている。
  • いわゆる自発的治癒、奇跡的ながんの緩解というものは、がん成長因子の活動の精神神経学的な調整によるものかもしれない。
  • リンパ球のT細胞とB細胞の表面にはレセプターがあり、細胞の免疫機能を始動させ、方向付け、修正する。このレセプターが、心がリンパ球に影響を与えるにあたっての、分子レベルでの基板である。レセプターは鍵であり、この鍵を開けるのは心身間の伝達物質、すなわち自律神経系の神経伝達物質、内分泌系のホルモン、免疫系の免疫伝達物質である。
  • がん細胞が常につくられているにもかかわらず、ほとんどの人はがんを発症しないというのは、からだに生まれつきそなわった免疫の監視システムがあって、がん細胞が臨床的に見て明らかな腫瘍へと成長する前に発見し、それを破壊するからである。一般にストレスに誘発された副腎皮質ホルモンの放出は、この自然な免疫学的監視システムの抑制を招いてしまう。このシステムにわずかな抑制が加わるだけで、特に体内に存在している患者のからだの統合性を脅かしている病原(例えば内発的に形成されたがん細胞)への罹患率は大きく高まる。
  • 生活に大きな変化をもたらすあらゆるストレス(家族の死、転職、引っ越しなど)は、大脳皮質ー視床下部ー脳下垂体ー副腎という軸を活性化して、コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン類)を産生させ、これが免疫監視システムの活動を抑える。不安、抑うつ、自尊心の低下はすべて免疫系の活動不全をもたらす。
  • 視覚化とリラクゼーションを組み合わせたサイモントン療法では、がんが強い破壊力を持った細胞だという「誤った」考えを再構築する。がん細胞を「弱く」「うろたえた」ものと思い描き、白血球を獲物に襲いかかるサメのように「強く」「たくましい」ものと描くのである。ホールらの研究によれば、この方法が細胞の免疫力を高められることを明らかにした。
  • 伝達物質とレセプターを分子生物学という学問によく見られる還元主義的な見方ではなく、心、からだ、細胞、遺伝子にいたる、環境から分子レベルにいたる情報変換の自然なループの一部としてとらえるべきである。

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