田中雅博師の『軽やかに余命を生きる』

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末期の膵臓がんでも、最期まで自分らしくエネルギッシュにがんばっています。医者で僧侶で末期膵臓がん患者である田中雅博さんの4冊目の本です。

この著作は口述筆記ということですから、残された時間は本当にわずかなのでしょう。

末期のがん患者へのスピリチュアルケアの重要性を訴えています。「スピリチュアル・ペイン」を「いのちの苦」と日本語を充て、「いのちのケア」が日本の医療現場にはこれが決定的に欠けていると苦言を述べています。

がんも治る時代になったというが、膵臓がんではそれはまだ先のことです。ほとんどの患者がいずれ命の終わりを迎えるわけですから、早い段階から自分の命が終わるという苦しみを感じているはずです。でもブログなどでそれを赤裸々に書くことは稀なようです。

自分ががんに侵され、治癒不可能な状態になったとき、いったいどうしたらいいのでしょうか。
できることをするだけです。できることは何かをよく知り、よく考え、今できる最善のことをすればいいのです。
そのできることの一つが、医学に力によって最善の治療を行なうことですね。
そしてもう一つの大事なのが、自分にとって「いのちより価値のあるもの」を見極め、それを軸にして自分の人生の物語を完成させるために生きることです。物語の主人公はあなたです。

治ることのない膵臓がんに、なぜ抗がん剤を投与するのか。それはいのちの期限を少しでも先延ばしにして、その得られた時間を「いのちより価値のあるもの」を発見して、自分の人生を再発見するための「猶予期間」とするためです。

キング・オブ・キャンサーと言われる膵臓がんは、告知されて茫然とし、立ち直ってからあれやこれやの治療法を考え、セカンドオピニオンをどうしようかと悩んでいる間に、早い人で3ヶ月で亡くなることもあります。自分のいのちが終わる苦しみを真剣に考えている時間もない。

膵臓がんだと告知されたら、その時点から自分の最期を想定して、「死」に対する自分なりの考えをまとめておくべきでしょう。そうすることが一つには、死に対する強烈なストレスを低減し、結果として免疫力が保たれて余命が伸びる可能性があるからです。

田中さんは『般若心経』はスピリチュアルケアのための経典だと言い、巻末には田中さんなりの『般若心経』の訳が載せられいます。

お釈迦さまはすべての苦しみを五蘊(ごうん)という苦にまとめられました。五蘊は、自分という幹から出た五つの枝から出た自己執着で、観音菩薩は、知恵が完成した状態では、これら五つの自己執着が皆空っぽだということを観察しました。
一切の苦しみをまとめた五蘊が空っぽになったということは、一切の苦しみを離れて安楽の彼岸に渡ったということになります。

「治りたい、もっと生きたい」も自己執着です。それを捨てれば楽になります。治ることだけに執着して、無理な抗がん剤治療を進め、がんと闘うのではなくて副作用と闘っているだけの時間は、勿体ない。

田中さんはこの本の中で「お釈迦さまも膵臓がんだったのでは?」との仮説を述べています。そうかもしれないという気がします。もっとも当時は膵臓という臓器の存在は知られていなかったはずですね。五臓六腑といいますが、この中には膵臓は含まれていません。

あなたにとって「いのちより価値のあるもの」って何でしょうか?


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