がんと食事

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チャイナ・スタディー 葬られた「第二のマクガバン報告」

どのような食事をすべきかは、がん患者にとって切実な問題です。食事で治ることはあるのだろうか? 再発や転移の可能性を少しでも小さくするためには、どのような食事にすれば良いのだろうか?。いやいや、がんになった以上、何を食べようが同じなのか。

主治医に「これからどのような食事をすれば良いでしょうか? 何か気をつけることはありますか?」と尋ねても、多くの医者は「何を食べても大して変わりません。好きなものを食べてください」というでしょう。

私自身はいまも、シュレベールの『がんに効く生活』に書かれている地中海食に準じた食生活をしています。

The China Study: The Most Comprehensive Study of Nutrition Ever Conducted And the Startling Implications for Diet, Weight Loss, And Long-term Healthこの本のなかで、キャンベルの『The China Study』を引用した箇所がいくつかあります。例えば「種と土壌」では、

最初の小さな腫瘍が大きく成長していくために必要な条件が満たされないようにすれば、進展期の成長を抑えることが可能である。

この段階ではさまざまな栄養素が大きな力を発揮する。ある栄養素はがんの成長を促進する(プロモータ)。また、ある栄養素は、がんの成長を抑制する(反プロモータ)。がんは、プロモータが反プロモータよりも多いときに増殖するのである。反プロモータが圧倒的に多ければ、がんの成長は抑制されるか、あるいは止まる。

まさにシーソーの原理である。この原理が極めて重要であることは、いくら強調してもしすぎることはない。

「食物は、常に汚染物質に打ち勝つ」(p.198)

シュレベールに大きな影響を与えた『The China Study』は、アメリカではベストセラーになっており、クリントン元大統領もこの本を読んで食事を植物ベースに変えたそうです。そして体重が11kgも減量し、心臓病も改善したと、CNNのインタビューで語っています。(リンク

『The China Study』は邦題『葬られた「第二のマクガバン報告」』で全3巻、下巻が2011年2月11日に完訳となっています。

著者のT・コリン・キャンベル氏は、「栄養学分野のアインシュタイン」と言われるように、永年栄養学研究の第一線で活躍してきたコーネル大学名誉教授です。

1982年に全米科学アカデミー(の下部組織NRC)が公表した「食生活、栄養とがん」の委員であり、この報告書をまとめた委員のひとりです。この「食生活、栄養とがん」は、発表されると大きな反響を呼びました。また、牧畜団体などからもさまざまな妨害、反対を受けました。そしてこの報告書の内容は、アメリカ政府の食事摂取指針に生かされることはありませんでした。

この本でのキャンベルの主張をごく簡単にまとめれば、

がんの原因は、肉と牛乳の摂取であり、「プラントベースでホールフードの食事(未精製の植物性食品)」はがんを予防し、再発と転移を防ぎ、ある種の大きくなった腫瘍にも有効である。

ということです。彼は肉だけではなく、魚・卵・牛乳・乳製品も健康に悪いと主張しています。

世界がん研究基金によるがん予防の勧告

キャンベル博士の「がんの原因は肉だ」という主張は、アメリカでは受入れられませんでしたが、1997年の世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)によるがん予防の勧告(14か条の勧告)には取り入れられています。

これは4500以上の研究を元に、「食べもの、栄養とがん予防」として報告されました。日本では、がん予防14か条、タバコの制限を加えてがん予防15か条として紹介されました。

  • 第1条 食事は植物性食品を中心とする。野菜、果物、豆類、精製度の低いデンプン質の主食など、できるだけ多様な種類の食べ物を摂る。
  • 第2条 体重はBMl(日本では体重/身長mX身長m)の数値18.5~25を維持して肥満を避ける。
  • 第3条 運動は1日1時間の早歩きと、1週間に合計1時間の強度の運動を行ない、体を動かす習慣を維持する。
  • 第4条 野菜・果物を1日に合計400~800g摂る。
  • 第5条 野菜・果物以外の植物性食品としては、1日に600~800gの穀類・豆類・イモ類・バナナなどを摂る。
  • 第6条 飲酒は勧められない。アルコール類を摂るなら男性は1日に2杯(ビール500ml、ワイン200ml、ウィスキー50ml、日本酒1合)以下、女性は1日1杯以下に控える。
  • 第7条 赤身の肉(牛肉、羊肉、豚肉など)は1日80g以下に抑える。
  • 第8条 総脂肪量を減らし、総エネルギー量の15~30%の範囲にとどめる。とくに動物性脂肪を控え、植物油を使用する。
  • 第9条 塩分は1日6g以下に抑える。香辛科やハーブ類を使用するなどして、減塩のための工夫をする。
  • 第10条 カビ毒に注意する。食べ物を常温で長時間放置せず、カビが生えたものは食べない。
  • 第11条 腐りやすい食品は、冷蔵庫か、冷凍庫で保存する。
  • 第12条 食品添加物や残留農薬に注意する。適切な規制下では添加物、汚染物質、その他の残留物はとくに心配いらない。
  • 第13条 黒こげの食べ物を避け、直火焼きの肉や魚、塩干し燻製食品は控える。
  • 第14条 栄養補助食品は、以上の勧告を守ればあえてとる必要はない。

当時、キャンベル博士はアメリカがん研究協会の創設を支援し、上級研究顧問の要職にありました。当然この報告においても重要な役割を果たしています。

2007年に、世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による同様の評価報告書「食物・栄養・身体活動とがん予防」が10年ぶりに 改訂されました。その中では牛・豚・羊などの赤肉・加工肉について大腸がんのリスクを“確実”に上げるとし、また、いくつかの食品や栄養素について“可能性大”と判定するなど、より多くのリスクおよび予防要因について考察されています。

  1. 肥満 ゴール:BMIは21-23の範囲に。推薦:標準体重の維持。
  2. 運動 推薦:毎日少なくとも30分の運動。
  3. 体重を増やす飲食物 推薦:高エネルギーの食べものや砂糖入り飲料やフルーツジュース、ファーストフードの摂取を制限する。飲料として水や茶や無糖コーヒーが推奨される。
  4. 植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜や果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物と豆を食べる。推 奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。トランス脂肪酸は心臓病のリスクとなるが、がんへの関与は知 られていない。
  5. 動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。ゴール:赤肉は週300g以下に。推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨していない。
  6. アルコール 男性は1日2杯、女性は1日1杯まで。
  7. 保存、調理 ゴール:塩分摂取量を1日に5g以下に。推奨:塩辛い食べものを避ける。塩分摂取量を1日に6g以下に。カビのある穀物や豆を避ける。
  8. サプリメント ゴール:サプリメントなしで栄養が満たせる。推奨:がん予防のためにサプリメントに頼らない。
  9. 母乳哺育 6か月、母乳哺育をする。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守る。
  10. がん治療後 がん治療を行ったなら、栄養、体重、運動について専門家の指導を受ける。

これらの報告(勧告)は婉曲に表現していますが、動物性食品の摂取は極力減らすこと、赤肉(牛・豚・羊)は摂らないこと、摂る場合でも週300g以下にすることを提唱しています。これはキャンベルが『葬られた第二のマクガバン報告』で言っている「1日50g以下」に等しくなります。

キャンベル博士の「プラントベースでホールフードの食事」との考えが大きな柱となっていると考えて良いでしょう。「動物性食品をすべて止めろ」とは、抵抗が大きくて、生産者や業界を考慮した書き方になったのでしょう。

日本においてはどうでしょうか?

国立がん研究センターの「がん情報サービス」の「日本人のためのがん予防法」では、「2.科学的根拠に基づくがん予防とは」及び「3.発がんに関わるリスク要因の評価」でがんの種類ごと、食事・栄養のカテゴリーごとに分析しています。

動物性食品によるリスクを認識しながらも、しかし結論は、「食事はバランスよくとる。野菜や果物不足にならない」などと大きく後退しています。世界がん研究基金のもっとも重要な点、動物性食品を控えることを全く無視した内容となっているのです。(下の表3)

表3 日本人のためのがん予防法

―現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法―

喫煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする。
食事 食事は偏らずバランスよくとる。
* 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
* 野菜や果物不足にならない。
* 飲食物を熱い状態でとらない。
身体活動 日常生活を活動的に過ごす
体形 成人期での体重を適正な範囲に維持する(太りすぎない、やせすぎない)
感染 肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合はその治療の措置をとる。

厚生労働省の「食生活指針」も同様に、

  1. 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
  2. ごはんなどの穀類をしっかりと。
  3. 脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう。
  4. たっぷり野菜と毎日の果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維をとりましょう。
  5. 牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで、カルシウムを十分にとりましょう。
  6. 塩辛い食品を控えめに、食塩は1日10g未満にしましょう。

となっているのですから、「乳製品は議論があるため推奨していない」とする世界がん研究基金(WCRF)報告を無視しています。どうやら厚生労働省とその管轄下にある国立がん研究センターは、「動物性食品ががんの原因」ということを認めたくないかのようです。

2007年の勧告の翌年に横浜市で開催された「国際栄養士会議」では、報告書作成に関わった研究者らが集まって詳細を報告しています。そのレポートが「がんナビ」に載っていて、

Kolonel氏は、「膨大な論文のレビューの結果、植物性食品を中心とした食事により、口腔がん、咽頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、膵がん、結腸直腸がんのリスクが低下することが確実」と語った。また、植物性食品を中心とすることで、動物性食品の摂取量が減り、過体重や肥満の予防にもつながり、がんのみでなく、循環器系の疾患の予防にも有効とした。

James氏は、肥満とがんに関する発表を行い、「これまでの体系的なレビューから、過剰体重が食道がん(腺がん)、膵がん、結腸直腸がん、乳がん(閉経後)、子宮内膜がん、腎臓がんのリスクを高めることが明らかとなってい る」と語った。加えて、「世界中で成人・小児とも過剰体重の割合が増加しており、この傾向になんとか歯止めをかける必要がある」とも力説した。

と書かれています。「がん予防10か条」は、『がんの補完代替医療ガイドブック』にも紹介されているのですが、その精神を正しく国民に伝えているとは言えないようです。

動物性蛋白質ががんの原因の証拠

キャンベルが動物性蛋白質ががんの原因だと確信するようになった理由を次のように挙げています。

  • 通常は成人の病気である肝臓がんが、フィリピンの子供に異常に多い原因を研究していた。キャンベルらは、ピーナツやコーンに含まれるカビ毒のアフラトキシンを大量に摂取していることが原因である、と考えていた。ところが、この研究プロジェクトを通じて知ったことは、最も高タンパクの食事をしている子供たちが、肝臓がんになるリスクが最も高い、という事実だった。がんになっている子供は、裕福な家庭の子供たちだったのである。
  • インドの研究者は、ネズミを二つのグループに分けて実験していた。一方にはがんを引き起こすアフラトキシンを投与し、そのあとタンパク質が総摂取カロリーの20%というエサが与えられた。もう一方のグループにも同量のアフラトキシンが投与されたが、そのあとのエサはタンパク質の比率がわずか5%というものだった。20%のグループではすべてのネズミが肝臓がんを発症していた。そして5%のグループでは、すべてのネズミが肝臓がんを免れていた。100対0という、驚くべき結果であった。
  • 牛乳のタンパク質「カゼイン」を20%与えられたネズミは肝臓がんを発症したが、小麦タンパクのグルテンでは、たとえ20%与えても発症はしなかった。
  • 同様に、牛乳のタンパク質カゼインが、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染しているハツカネズミの肝臓がんを劇的に促進させることを実験で証明した。
  • 更に、シカゴのイリノイ大学の研究グループによる、ネズミの乳がんの研究では、カゼインの摂取量の増加が乳がんの発生を促進することを証明していた。

いよいよ人間に関して証明をする番である。キャンベルらは、チャイナ・プロジェクトと名付けた大規模な疫学調査によって、同じことを証明したのです。

チャイナ・プロジェクト

「チャイナ・プロジェクト」は一九八三年に始められ、現在(2004年)も進行中の長きにわたる研究です。中国全土から65の郡を選び、それぞれ100人の成人を対象として、65の郡ごとに「食習慣」や「ライフスタイル」「病気の特徴」を比較しています。各郡ごとに、「食事やライフスタイルや病気の特徴が、どのように相互に関連し合っているか」を突き止めることが目的でした。ニューヨーク・タイムズ紙が「疫学研究のグランプリ」と絶賛した研究によって、人間においても、動物性蛋白質が各種のがんの発症を促進することが、疫学的に証明されたのです。

驚くことに、これらの実験において、がんの発症が確認されたあとでも、低タンパクの食事はそれに続いて生じるがんの増殖を劇的に阻止したのです。

キャンベル博士は、「重症の心臓病、ある種のやや重いがん、糖尿病、そのほかいくつかの慢性疾患は、食事によって回復可能であることを示す衝撃的な証拠がある」と断定します。

本書の核ともいえる「真実」


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  • 環境や食品の中の化学合成物質は、たとえどんなに問題があったとしても、ガン発症の主たる原因ではない。
  • 両親から受け継いだ遺伝子は、病気の犠牲になるかどうかを決定する最も重要な要素ではない。
  • 「やがては遺伝子研究の成果が薬による病気治癒を可能にするだろう」といった期待は、今すぐ可能で強力な解決策を無視したものだ。
  • 炭水化物、脂肪、コレステロール、オメガ3脂肪酸などの栄養摂取をうまくコントロールしても、それは長期にわたる健康にはつながらない。
  • ビタミン剤や栄養剤のサプリメントは、長期にわたる病気予防の効果を与えてはくれない。
  • 薬や手術は、アメリカ人を死に追いやるほとんどの病気を治すことはない。
  • あなたの主治医は「あなたが最も健康になるために必要なこと」を、おそらく知らないだろう。
  • 糖尿病患者は食習慣を変えれば、薬をやめることができる。
  • 心臓病は食習慣だけで回復させることができる。
  • 乳ガンは、食べるものによって決まる「血中女性ホルモンのレベル」と関係している。
  • 乳製品の摂取は、前立腺ガンのリスクを高める。
  • 果物や野菜に含まれる抗酸化物質は、高齢者の知的能力の維持と関係している。
  • 腎臓結石は、ヘルシーな食習慣で予防できる。
  • 子供にとって最悪な病気の一つである1 型糖尿病は、間違いなく授乳習慣と関連している。

こうした研究結果は、「よりよい食習慣こそが、さまざまな病気から身を守る最も強力な武器である」ことを立証している。

がんの進行は止められる

キャンベルは、第3章「がんの進行は止められる」と第8章「がん対策はどのように改善されるべきか」で、がんに焦点を当てて説明しています。

がんの進行過程を、(芝に例えれば)

  1. イニシエーション(形成開始期)芝生の種を蒔く
  2. プロモーション(促進期)芝が種から生長をはじめる
  3. プログレッション(進行期)隣の敷地や道路にまで広がる

に分けています。2.のプロモーション期、つまりがん細胞が発見可能な大きさになるまで成長し増殖する期間は、食事がいちばん重要となるときです。またこの時期にがんの成長に必要な要素が与えられなかったとき、がん細胞は「休眠状態」に入ります。このとき、動物性食物はがんのプロモーター(促進物質)となり、植物性食物はアンチ・プロモータ(抗促進物質)となるのです。どちらの食物が多いかによって、この過程ではがん細胞の増殖のONとOFFを切り替えて、コントロールすることが可能になるのです。

食べ物によって、ほとんどのがんを予防することができるのです。早期発見・早期治療などと言いますが、それ以上に「がんを育てないものを食べる」ことが重要です。

がんの再発・転移にも低タンパクの食事が有効だと言えるでしょう。

再発・転移したがんにはどうでしょうか。プログレッション期には食物でがんに対抗することはできないのでしょうか。これががん患者として一番関心があることです。再発・転移したがんには、放射線や抗がん剤ですら有効ではありません。治ることは期待できず、延命効果があるだけです。これらでもがん細胞を消失させることは難しいのですから、食事療法だけでがんが消えるはずもありません。がんが消えることを「科学的に」証明した食事療法は一つもありません。この点に関しては『がんに効く生活』がより詳細に書いているので、そちらを読むと良いでしょう。

しかし、キャンベルはまた次のようにも言っています。

致命的な皮膚ガンである進行メラノーマ(進行性悪性黒色腫)は、ライフスタイルを変えることによって軽減、あるいは回復が可能なことも、いくつかの研究が証明している。

実験動物の体内で発症し成長中のガンであっても、正しい栄養の摂取によって、成長をスローダウンさせたり、進行を停止させたり、あるいは回復させることさえ可能だ。幸運なことに、人間の場合でも、同じ「正しい栄養」の摂取が、最大限の症状改善をもたらしてくれるのだ。それは病気のあらゆる段階において可能なのである。

葬られた「第二のマクガバン報告」(下巻)プラントベースのホールフードは、治る可能性を高めてくれます。治らなくても、がんの進行を抑えてくれる高い可能性があるのです。シュレベールは『がんに効く生活』で、自ら証明して見せました。

肉はどこまで許されるか?

では、肉は一切食べてはいけないのでしょうか。いきなりゼロにしろと言われても難しいのではないだろうか。博士は次のように言っています。

「チャイナ・プロジェクト」の研究結果は、「摂取する動物性食品の割合が少なければ少ないほど、健康効果が高い」ということを示している。たとえ動物性食品の割合が10%から0%に減少した場合でもこの考え方は当てはまる。したがって「動物性食品の割合はゼロが最善である」としても不適切ではない。

しかし、このことは完全に証明されているわけではない。確かにほとんどの健康効果は、動物性食品の摂取量が非常に低いときに実感される。しかし、「ゼロ」ではないというのも事実だ。
したがって、私のアドバイスは、「食事からすべての動物性食品を排除すること」だが、むやみに完壁を期す必要はない。ということだ。

私の場合は、例えばカレーライスの中にポークが一切れあったとしても、それをよけたりはしません。おいしく食べさせていただきます。

ただ、牛乳は一切摂らない方が良い。牛乳は子牛が摂るものであって、人間が摂るものではない。授乳期を過ぎた哺乳動物で乳を飲む動物はいません。

そして、これが大事なことだが、がんにならないことのためだけに食事があるわけではないのです。食べる楽しみもあれば、文化的側面もある。「豊かさが生む病気」ががんならば、「貧しさが生む病気」もあるのです。がんにならないための食事が、必ずしも幸福とは限らない。どのような食生活をするかを選択するのはあなたです。

食べることは、外界の異物を体内に取り入れることですから、どんな場合でも「リスク」があります。それを言えば、生きていることがリスクなんですね。

生きていることは、健康に悪い !

キャンベルの書籍では、「がん予防」には動物性蛋白質を控えて(キャンベルはほぼゼロにという)、適度な運動をすることです。そうすれば、がんになる確率を小さくでき、がんで死ぬことはほとんどないというのです。シュレベールはさらに発展させ、その他の研究成果も取り入れて、いくつかの食品成分の効用や、精神的な安定ががんに及ぼす影響なども考えています。

疫学研究の結果にはいつでも批判や反論があり得ます。その根本的な原因は、医療の不確実性であり、人間の躰もがんも「複雑系」だからです。原因と結果が、一対一に対応しないのですから、「これががんの原因だ。こうすれば100%がんは防げる」とはなかなか言えないのです。それでもチャイナ・プロジェクトの研究結果は大きな影響を与えています。このような疫学研究は、もう二度とできないでしょう。

私自身は、がんとの闘いには免疫力を含めた体力が必要であり、少量の動物性蛋白質はあった方が良いと考えています。ですから、2007年の世界がん研究基金(WCRF)が提唱するように、1週間で300gまでの肉は許容範囲で良いと考えます。可能ならばさらに減らす方が良いのですが。

サプリメントは必要ないがビタミンDは別

キャンベルは、ビタミンDとビタミンB12以外のサプリメントは摂る必要がないと言います。ただし、厳格な動物性蛋白質を数年間を超えて制限している場合は、ビタミンB12が不足するからサプリメントで補充した方が良いといいます。ビタミンDは、1日に20分程度日光に当たれば、食事からの摂取と合計して必要量は生産できます。ただ、1日室内で過ごすような人はサプリメントで摂っても良いが、1000IU/日を超えないようにと言っています。私の場合はマルチビタミン剤としてちょうど1000IUのビタミンDを毎朝摂っています。

ビタミンDの重要な働きについては、わざわざ補項を設けて開設しています。特に動物性タンパク質の多い食事を続けていると、活性型ビタミンDのレベルが低下し、同時にIGF-1と言われる「インスリン様成長因子」が活発になる。これは古い細胞の除去を妨害しつつ、新しい細胞の成長を促進させるように働く。こうした体内環境はがんの成長にとって好ましいものであるとしています。

牛乳と乳がん、前立腺癌、Ⅰ型糖尿病、多発性硬化症の関係は明白です。牛乳は離乳期を過ぎた哺乳動物が飲むものではない。まして他の動物の乳を飲むなんて、合理的ではありません。牛乳との関係は、先のコメントで説明したように、いろいろと評価が分かれています。分かれてはいるが、リスクが大きいのなら飲むのを中止した方が良いに決まっています。

牛乳が白くなければ、たとえば茶色をしていたら、誰も飲まないに違いないでしょう。

糖質制限食との関係

最後に糖質制限食との関係について。

キャンベル博士は、「心臓病で高血圧の肥満の男(アトキンス博士のこと)」が、「やせて心臓を健康に保ち、血圧の正常化を約束するダイエット法」を売っていると、アトキンスダイエットをぼろくそに批判しています。

江部康二先生はアトキンスダイエットを「スーパー糖質制限食」と書いていますから、これらは同じものだと考えて良いでしょう。しかし、「スーパー糖質制限食」の長期的評価のエビデンス(科学的な根拠)はないと、江部先生も認めています。スーパー糖質制限食(アトキンスダイエット)で、発がんのリスクが上がるのか下がるのか、エビデンス(科学的な根拠)はないということです。

スーパー糖質制限食なら、脂肪摂取比率50~60%ですから、そのような集団を長期に追跡した論文は存在しませんので、ご指摘どおり、スーパー糖質制限食の長期的安全性に関するエビデンス(科学的な根拠)はありません。食事療法の長期間のRCT研究論文は極めて困難です。

また、コホート研究は参考になりますが、一定のバイアスが入ることは否めません。従いまして、エビデンス(科学的な根拠)的にすっきりは、今後も極めて困難と思います。論文による信頼できるエビデンス(科学的な根拠)が期待できない以上は、理論的に考えることが最善と思います。

  1. 過去エビデンス(科学的な根拠)がある血液検査の動脈硬化のリスク要因が、スーパー糖質制限食で全て改善する。
  2. 発ガンの大きな要因としてエビデンス(科学的な根拠)がある高血糖と高インスリン血症が、スーパー糖質制限食で改善する。
  3. 発ガン予防のエビデンス(科学的な根拠)があるHDL-コレステロールが、スーパー糖質制限食で上昇する。

スーパー糖質制限食実践により、1)2)3)の利点があります。
他の、どのような食事療法も1)2)3)の利点をクリアすることは不可能です。

と、発がん予防ができるはずだとしてキャンベル博士とは真っ向から対立します。キャンベル博士は、大規模な疫学調査(チャイナ・プロジェクト)などで、動物性蛋白質が癌を誘発することは証明されていると主張しているのです。

膵臓癌患者の場合、再発転移は避けたいからがん細胞は増やしたくない。しかしインスリンが少ないから血糖値の管理も必要です。気を緩めるとすぐに上昇します。

さて、どうするか? どちらが正しいのか?

江部先生も講演会などで言っているようですが、「肉を食べても良いというと際限なく食う人がいるが、物事には限度がある。消費する以上に食べると太るのはあたりまえだ。」

私の結論は、これまで通りの「プチ糖質制限食」です。低GI値の食品、玄米など、なるべく野菜を多く摂り、少量の肉と魚。バランスよく食べる。現状ではこれが<私には>良さそうです。最後は自分の体に聞いてみる。そうすれば自ずから答えが出てきます。黒豚を食ったら一晩下痢に悩まされたのだから。つまり、「玄米魚菜食」で、たまに肉を食えれば幸せという生活。我々団塊の世代が、小学生時分に食っていたものを食えば良いのだ。(完)

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