ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)とは?

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福島第1原子力発電所事故のあとに止まっていた京都大学の原子炉KURが再稼働をし、ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)の治験も再開できると報じられました。

BNCTとはどういうものでしょうか?

2016年に、国立がん研究センターのホウ素中性子捕獲療法(BNCT)の施設が、原子力規制庁の審査に合格して公開されました。

プレスリリース:世界初となるリチウムターゲットの病院設置型BNCTシステ

20160303_09_29_17

2017年3月ごろをメドに皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)などを対象に臨床試験を始める計画だそうです。しかし、BNCTは膵臓がんには適用できないでしょう。

BNCTの原理は、患者にホウ素(10B)を含む薬剤を投与し、がん細胞に取り込ませたうえ、加速器を利用して熱中性子を照射する。

ホウ素(10B)は窒素(14N)の2000倍も効率よく中性子を捉えます。原子力施設では中性子の遮蔽材として用いられています。がん細胞にのみ取りこまれたホウ素を含む薬剤は、熱中性子を照射されることでホウ素(10B)がリチウムの原子核(7Li)とα線(ヘリウムの原子核)に核分裂します。生じたα線の飛程はせいぜい10μmほどなので、がん細胞内にしか影響しません。

  10B+n(中性子) → 7Li + 4He (α線)

核分裂で発生した高エネルギーのα線によってがん細胞のDNAがズタズタに破壊され、がん細胞は死滅します。ホウ素を取りこんでいない正常細胞にはほとんど影響を与えないと考えられています。

しかし、中性子はホウ素や水素などの原子番号の小さい原子とよく反応します。したがって、人体の主要な構成分子である水(H2O)によって吸収されてしまいます。そのために皮膚から70mm程度にある腫瘍にしか適用できないのです。最初の診療試験がメラノーマだというのもそういう理由からでしょう。

つまり、胃の裏側にある膵臓がんには中性子(熱中性子)が届かず、適用できません。将来的に可能になるかもしれませんが、ずっと先の話でしょうね。残念ですが。

ちなみに「中性子爆弾」というものは、中性子が鉄やコンクリートなどは比較的よく通すが、水などの低原子番号の物質には吸収されるという性質を利用したものです。戦車やビルは壊さずに内部の戦闘員だけを殺すことができるのです。

中性子爆弾はエネルギーの高い「速中性子」を利用しますが、BNCTではよりエネルギーの低い「熱中性子」を利用します。速中性子の少ない加速器とターゲットを開発することで実現できた技術です。


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