がんに効く温泉は本当か?

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玉川温泉・三朝温泉の公式見解

マスコミでも「玉川温泉でがんが消えた」「三朝温泉地域のがん死亡率は全国平均の半分である」などと話題になっています。これらの温泉の公式サイトでも、次のように書かれています。

  • 湯治3~5日目頃に一時的な抗菌力の減退があるものの、温泉浴を続けていくに従い、次第に抗菌力が増大し、10日目頃には温泉浴開始前の1.5~2倍にもなることから、身体の防衛力増強や治癒力の増進など好ましい効果が期待できます。
  • 個人差があり、必ず治るとは断言できません。湯治により、自分自身が本来持っている免疫力・治癒力が向上し、その結果として回復に向かわれるものであることをご理解下さい。
  • 三朝のお湯は、高濃度のラドンを含む世界屈指の放射能泉です。 ラドンとは、ラジウムが分解されて生じる弱い放射線のこと。 体に浴びると新陳代謝が活発になり、免疫力や自然治癒力が高まります。 これが自慢の『ホルミシス効果』です。
  • ガン死亡率も全国の半分。
    1992年、三朝温泉地区の住民のガンによる死亡率は37年間の統計解析から全国平均の約1/2であるとの結果が報告され、「低線量被曝の影響を科学的に調べ直すべきだ」と提言しています。これは放射線ホルミシスの学説を強く証明するものでもあります。

玉川温泉は「ラジウム」、三朝温泉は「ラドン」と言っていますが、同じものです。

ラジウムとラドンはウランの娘核種

ラジウムもラドンもウラン-238が崩壊して生成されます。下図のように、ウラン-238はアルファ線、ベータ線、ガンマ線を放出しながら、最後は安定な鉛になります。その過程で多くの娘核種が生成されますが、その中にラジウム-226とラドン-222があります。ラドンだけが気体です。

ラジウム-226は半減期1600年でα崩壊してラドン-222になりますが、ラドンは気体なので空気中に浮遊します。温泉ではこのラドンを肺に取りこむことになります。肺に取りこまれたラドンは、さらにアルファ線を出してポロニウムになります。さらに多くのアルファ線やガンマ線を出しながら鉛になります。ラドンからのアルファ線は飛程は数ミリメートルなので、近くの細胞にアルファ線を浴びせ続け、その結果肺がんが増加するのです。

「がん情報サービス」などには次のように説明されています。

欧米の一部地域の地下室等で高い濃度が検出されるラドンによる室内環境汚染は、肺がんのリスク要因となることがわかっています。

放射線ホルミシス効果

三朝温泉のサイトで言う放射線ホルミシス効果とは、「弱い放射線を微量受けることで細胞が刺激を受け,身体の細胞を活性化させ毛細血管が拡張し、新陳代謝が向上、免疫力や自然治癒力を高める」とうたわれているものです。

世界保健機構(WHO)は、多くの国でラドンが喫煙に次ぐ肺がんの重要な原因であるとしています。アメリカの環境保護庁(EPA)は、ラドンに安全な量というものは存在せず少しの被ばくでもがんになる危険性をもたらすものとしているのです。また、米国科学アカデミーは、毎年15,000から22,000人のアメリカ人が屋内のラドンに関係する肺がんによって命を落としていると推計しています。

国際放射線防護委員会(ICRP)のICRP1990年勧告では、「今日、”ホルミシス”と呼ばれるこのような影響に関するほとんどの実験データは、主として低線量における統計解析が困難なため、結論が出ていない。現在入手しうるホルミシスに関するデータは、放射線防護において考慮に加えるには十分でない」と書かれています。

日本でも電力中央研究所などがホルミシス効果の研究を行ってきましたが、現在は止めています。

電力中央研究所のホームページでは「放射線ホルミシス効果に関する見解」を次のように載せています。

  • 現在、当センターでは、放射線ホルミシスの研究は行っておりません。
  • これまでに得られた知見からは、ホルミシス効果を低線量放射線の影響として一般化し、放射線リスクの評価に取り入れることは難しいと考えています。
  • 当所の成果を引用して放射線ホルミシス効果を謳った商品の販売を行っている例がありますが、当所とは一切関係ありませんのでご注意下さい。

これは「岩盤浴サウナ」や「岩盤浴グッズ」などを指しているのでしょう。


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三朝温泉地区ではがん死亡率半減

当時近畿大学原子力研究所教授の近藤宗平、国立がんセンターの放射線研究部長・祖父江友孝、岡山病院院長の古本嘉明らは、鳥取県三朝町の温泉のある地区の住民と近隣で温泉の無い地区の住人を比較対照した疫学調査を行い、非温泉地区に比較して温泉地区では1952年から1988年の癌死亡率が低いとする論文を日本癌学会の会報に発表した。以降、この論文はホルミシス効果の宣伝に利用されるようになる。

三朝温泉の公式サイトはこれを取りあげているのですが、同じ研究グループが行った再調査の結果は、死亡率の減少を否定するものであり、全がんの死亡率は対照地域と変わらず、有意に低いのは男性の胃がん死亡率だけで(胃がんの死亡率に関しては他の一般温泉(大分・別府温泉)においても低下していることから、放射線の関与は否定されている)、有意ではないが男性の肺がん死亡率は高まってさえいたのです。

統計的処理の問題があり、自らに有利な研究データのみをとりあげて宣伝しているのです。

温泉は心身のリフレッシュ

「がんが消える」などの過度の期待はせず、温泉は日常を離れて心身をリフレッシュする、おいしい料理ときれいな景色を楽しんで、免疫力をアップすると考えた方が良さそうです。

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