がんの自然治癒とプラシーボ反応

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多くの医者が、がんの”自然治癒(奇跡的治癒)”を目の当たりに見て経験しています。多くはないですが、宝くじに当たる確率よりも高そうです。

医師で『患者の力: 患者学で見つけた医療の新しい姿』などの著作のある加藤眞三氏も、ブログ『進行がんにもみられる自然退縮 』で紹介しています。

私の経験でも、その数は多くはありませんが、悪性腫瘍が治療もしないのに退縮した例を2人みています。二人とも宗教的に高い地位にある人で、がんの告知や治療の説明を受けた後に、それを受け止め、自分自身で積極的な治療は受けないことをきめた人です。池見先生の分類では、実存的転換や宗教的目覚めがあった人にあてはまると推察されます。

このような自然退縮を自分で意識的に起こすことは、おそらく抗がん剤で治療効果が得られるよりも確率の低いことです。凡医師が凡夫にすすめられる方法ではありません。
しかし、このような例があることを知っているだけでも、有意義だと私は思います。どのような段階のがんであっても、予想のできないよい経過をたどる例があることを知っていれば、、医師にとっても患者さんへの接し方が変ってきます。患者さんや家族も、このような例があることを知っていると最後まで希望を持つことができます。

低用量抗がん剤治療を行っている先生のブログにも自然治癒の例が書かれています。

現在のがん治療の功罪~「がんの不思議

がん患者ならだれしも「自分だけは奇跡的に治りたい」と願っています。どうすればそれが起きるのか? 確実にこうすれば良いという答えはありません。しかし、どうやら奇跡的治癒・自然寛解が起きる人には共通点がありそうです。

奇跡的治癒例を世界に先駆けて研究したの池見酉次郎氏や中川俊二氏は、その症例のほとんどの患者に「実存的転換」というべき変化があったと報告しています。「実存的転換」の意味は中川俊二さんの言葉を借りると、『今までの生活を心機一転し、新しい対象を発見し、満足感を見出し、生活を是正するとともに残された生涯の一日一日を前向きに行動しようとするあり方』です。

日本の心身医学の創始者である九州大学の故池見酉次郎教授は、中川博士とともにがんの自然退縮例を研究しました。

池見教授は、74人のがんの自然退縮がみられた患者さんで、精神生活や生活環境を詳しく分析できた31人をまとめています。31人中23人(74パーセント)に人生観や生き方の大きな変化があったとされています。その23人の中7人はかねてから人間的な成長度の高い人や真に宗教的な生き方をしてきた人たちであり、がんの告知がきっかけになり、永遠の命へのめざめが起きたそうです。5人は信仰をもっていた人たちの中で、がんを宣告されることによって信仰の対象としていた教祖や神仏に自分のすべてをまかせきるという全託の心境になったとされています。5人は家族からのサポートや周囲の人の温かい思いやりに包まれて主体的な生きがいのある生活へ転換が起きた人であり、6人は生きがいのある仕事に打ち込んでいった人だそうです。このように、約4分の3の人では、生きがいや生き方に大きな変化があったときに、がんの自然退縮があったというのです。

ハワード・ブローディの『プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬』では、「私たちが、周囲から自分の健康に関する何らかのメッセージを受け取ったとき、それが大切な人間関係と結びついている場合には特に、私たちの身体はメッセージに反応する。」として、

意味づけを変えるこうしたメッセージを受け取ると、からだは何をするのだろう? プラシーボ反応について科学がこれまで明らかにしたことを大雑把に理解する一番いい方法は、私たちの誰もが「体内の製薬工場」を持っていると想像することだと思う。

と延べ、体内の製薬工場=プラシーボ反応をこのように要約しています。

  • プラシーボ反応を考えるときは、「体内の製薬工場」をイメージするとわかりやすい。プラシーボ反応を科学的に探究すると、人間のからだには、体内で化学物質を放出し、ほとんどの場合は自力で治癒する能力があると思われるからである。ある種の治癒的なメッセージには、体内の製薬工場を始動させ、その働きを高める力があるらしい。
  • 体内の製薬工場をもっとも効果的に刺激するメッセージは、病気が私たちに対して持つ『意味』を変化させる。意味がポジティブな方向に変化するのは、私たちが病気の説明を十分に受けたと感じるとき、周囲の人たちからの思いやりを感じるとき、自分を悩ませている問題に対して主導権を持っていると感じるとき、である。
  • 人間はあるできごとについて物語を織り上げることで、そのできごとに意味を与える。そして体内の製薬工場は、私たちが自分の健康状態や病気について織り上げる物語から強い影響を受ける。より明るい結末を組み立てることで、私たちは意味を変化させ、それによって体内の製薬工場を刺激することができる。

私たちの「体内製薬工場」がフル稼働したときに奇跡的治癒、自然寛解が起きると考えるが、それを恋い焦がれる者には訪れない。


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あなたが治癒を必死に願えば願うほど、求めれば求めるほど、治癒は遠のいていってしまうのである。その意味で治癒は愛に似ているのかもしれない。愛する人が欲しいと必死になるあまり、誰かと会うたびに夢に見た人生の伴侶を求めるような態度を取るなら、いずれはそうなったかもしれない人さえ遠ざけてしまい、すべての愛をつぼみのうちに摘みとる結果になってしまうだろう。出会いをうまく活かし、お互いに満足できる恋のできる人は、たいてい相手を必死で求めているわけではなく、それが運命なら独りでも生きていけるという自信を持っている人である。ふさわしい伴侶を引き寄せるのは、まさにこの自信なのである。
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<プラシーボ効果あるいは治癒に対して>疑いが頭をもたげてきたとき、私たちは二つの反応のどちらかをとる。この二つは一見ほとんど同じものに見えるかもしれないが、じつは大きな違いがある。ひとつは「チクショー! こんな疑いはどこかへ捨ててしまわなくちゃ。心をポジティブにして、それをからだと結びつけなきゃ治療はうまくいかないぞ。だから疑いは追い払わなきゃいけないんだ。そうしないと体内の製薬工場は働いてくれないからな。」希望と期待をこのように考えることは、また自動販売機の罠(硬貨投入口に正しい硬貨を入れれば、目的の品が出てくるように病気が治ると錯覚することを指す)に落ちることである。これでは治癒を高めるより妨げることになりがちだ。

疑いに対する第二の反応は、それを自然なことと見るものである。あなたはこう考える。「どっちにしても、結局この治療が効くかどうかは知りようがない。でも、希望を持っていれば治療がうまくいく可能性は高まるだろう。だから希望を呼びだすために自分でできることを考えてみよう。それも責めたり、罰したり、何かを引き替えにしたりしないでやってみたいものだ。つまるところ、これは私が治るかどうかの問題だけじゃない。私はどんな人間になりたいか、私の人生をどんな物語にしたいかの問題なのだ。必要とあらば、希望を持った人間になるか、疑うばかりの人間になるか、自分で決めるしかない」
この二番目の考え方のほうが、治癒をもたらす可能性はずっと高い。

「治る」ことだけにこだわっているかぎりは、治癒を取り逃がしてしまうのです。

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