CT検査の被ばくでがんになる?

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がん患者は、治療の経過を把握するために腫瘍マーカー検査を受けます。腫瘍マーカーが上がってきたら造影CT検査をするのですが、なかには「CT検査を受けたいけど、放射線被ばくによってがんのリスクが増えのでは?」と心配し、検査を躊躇するかたがいます。

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これは、近藤誠氏は「CT検査でがんになる」というレポートや書籍の影響があるのでしょう。

近藤氏は次のように主張しています。

  • CTによる被ばく線量はエックス線の200~300倍である
  • 1回のCT照射による被ばく線量(実効線量)は18~29ミリシーベルト(mSv)
    ただし、通常は1回の検査で2、3回は照射する
  • 低線量でも発がんリスクがあるとして、原発労働者には40mSvでも労災認定されている
  • 原発労働者の生涯の累積被ばく線量が20mSvでも発がん死亡数が増加している
  • 広島・長崎の被爆者の経過観察の結果、10~50mSvでも発がんによる死亡数が増加している
  • 欧米では以上のデータを根拠に、医療被ばくの低減に真剣に取り組んでいるが、日本では専門家も患者保護に動こうとしない
  • 最新鋭の多列検出型CTは1スライスあたりの被ばく線量を減少させるはずだったが、装置が急増することによって逆に総被ばく線量は増加している。より詳細で広範囲の撮影が可能になったためである
  • 日本のがんの3.2%は医療被ばくが原因といわれたが、いまではそれは2~3倍になっていると思われる
  • 不必要・不適切なCT検査、「とりあえずCTをやっておきましょう」という検査が多すぎる。医者に知識がないのと病院経営上の理由でムダなCTが行なわれている。
  • 胸部CTによる肺がん検診のくじ引き試験では、寿命延長効果は認められなかった。マンモグラフィによる検診もがんの予防効果はないとの論文がある。

「がんもどき理論」の近藤誠氏の考えには賛同できませんが、これらの主張は概ね正しいと言えます。

確かに日本の医療被ばくは多すぎます。CTの設置数でいえば、人口百万人当たり日本は107台で第1位、第2位のオーストラリア56台の倍になっています。OECDの平均は25台です。

それでも欧米ではすでに数年前からCTによる被ばく線量を問題にしています。

ラジオロジー誌2009年11月号に掲載された、米国放射線防護測定審議会および放射線の影響に関する国際連合科学委員会の発表を元にした研究では、全世界 での画像診断による1人当たりの被曝線量が、過去10~15年で倍増したことが明らかになっている。中でも米国は、他の国と比べて被曝量の増加が多かっ た。

さらに他の研究では、1980~2006年の間で、画像診断による被曝量が6倍になり、また過去56年間で、放射線または放射性医薬品を用いた年間の診断回数は、15倍に増加したと推定されている。

米国がん研究所(NCI)の放射線疫学の客員研究者によれば、「CTの使用頻度は劇的に上昇し、安易に使用されるようになっている。CT検査を行う場合、まず、本当に検査が必要であるかどうかを調べた上で検査する必要があるかを検討すべきなのに、今はその基本を忘れて、病気でもない患者にどんどんCT検査を行うようになってきている。また、頻度だけでなく、CTをいつ使用すべきかという検討がなされてこなかったことを反省し、医学界全体として、使用対象を慎重に検討し、検査の利点が有害性を上回る場合にのみ行うべきである」としている。

放射線による発がんのリスクを勧告しているのはICRPです。

ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告は出されるたびにより厳しくなっています。例えば放射線業務従事者の被ばく限度は50mSv/年という時代が長く続いたのですが、 1990年勧告では「いずれの5年間でも100mSvを超えない」ことを定めて、実際上年間20mSvの制限がかかるようになりました。この20mSvという線量は、近藤医師も書かれているように1回のCT検査で超えてしまう数字です。

ICRPはCT検査のような外部被ばくの場合、累積で1000mSv被ばくすると、がんなどによる生涯死亡リスクが5%増加すると勧告しています。

1回の造影CT検査による被ばく量を50mSvとすると、それによる生涯死亡リスクは0.25%増加することになります。20回のCT検査で1000mSvですから5%増加です。

ところで、「二人に一人ががんになる時代」と言われますから、仮に生涯のがんのリスクが50%とすると、それが50.25%に増えるというわけです。あるいは20回の累計なら55%になる。

しかも、今浴びた放射線によってDNAに傷がつき、それが目に見えるがん細胞にまで育つには10~20年かかると言われています。


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ですから、治らない末期がんの患者が20年後にがんになるリスクが5%増えることを心配することはないのです。

それよりも、今の腫瘍の状態を頻繁に確認して、治療方針を考える、変えるなりに活かしたが利口です。

要は、どんな検査にもリスクとベネフィットがあるのですから、今どちらを選ぶべきかを賢く選択しましょう。

症状がないのならCTは撮らない。「取りあえずCTを撮っておきましょう」と言われたら、「まずレントゲンをお願いします」

PET検診では4~5mSvの被ばく線量になります。造影CTよりも一桁小さい被ばく量ですが、PET検査による被ばくは「内部被ばく」です。外部被ばくと同等に考えることはできません。「石炭ストーブの前で暖をとっている人に伝わる平均エネルギー(外部被ばく)と、その赤く焼けた石炭を食べる人に伝わるそれ(内部被ばく)とを分別しない」で計測しても、真の効果は分かりません。PETによる5mSvはCTのそれと同じではないのです。

確かにムダな検査が多いし、国民全体の総被ばく線量はもっと下げる必要があります。しかし必要なCT検査は被ばく線量や10年、20年後の発がん気にすることなく(気にする必要もない)受けましょう。

正しく怖がることが必要です。

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