ケトン食でがんは消えるのか?

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ケトン食ががんを消す (光文社新書)ケトン食ががんに効果があるのではないかと、以前から話題になっていました。昨年に多摩南部地域病院外科の医師、古川健司氏が『ケトン食ががんを消す (光文社新書)』を出版して以来、いっそう人気に拍車がかかっているようです。はたしてケトン食は本当にがんに効くのでしょうか。

本のオビにはこう書かれています。
『世界初の臨床研究で実証!末期がん患者さんの病勢コントロール率 83%』

ケトン食とは

ケトン食とは食事療法の一つで、摂取エネルギーの87%を脂肪で摂るという、極端に脂肪の多い食事となります。これを実行すると体内の「ケトン体」が非常に増えます。

糖・炭水化物の摂取を極端に減らすことにより、体内でエネルギー源として通常使われている糖が枯渇し、代わりに脂肪が分解されてケトン体が生じ、これをエネルギー源として利用する体質に変えます。もともとは小児の難治性てんかんに有効であるとされて欧米で普及しました。最近では、ケトン食のがんへの効果について研究が進みつつあるのです。

ケトン食ががんに効くメカニズム

がん細胞そのものにインスリンを出させるメカニズムがあり、自分のエネルギー源である血糖を取り込みやすくさせているのではないかとの仮説があります。

がん細胞は、正常細胞の3~8倍もブドウ糖を取り込んでいることがわかっています。この性質を利用してPET-CTでの検査が行われています。ケトン食を続けるとインスリンの分泌が低下するため、がん細胞へのブドウ糖の供給が減ることになり、いわゆる「兵糧攻め」状態になります。

体内に生成されたケトン体が、がんを誘発する酵素であるβーグルクロニダーゼの活性を低下させ、炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす化学物質)が増えるのを抑えることで、抗がん作用を発揮することが示されています。
2015年には権威ある医学雑誌『ネイチャー・メディスン』に「ケトン体が炎症を抑制する」という論文が発表されました。

「ケトン体によるがん治療」の最新研究

糖質制限食のパイオニアである江部康二氏によると、

大阪大学の末期がんの患者さんで数例、異常にインスリンが出ているケースが確認されているのです。大阪大学では現在、糖質制限食のがん抑制効果について積極的な研究が行われています。

2015年の第53回日本癌治療学会学術集会において、肺がんの末期であるⅣ期の患者さん5人にケトン食治療を行ったところ、2人が寛解(症状が落ち着き安定)し、それぞれ32カ月間と20カ月間生存中、1人ががんは残るものの26カ月間生存中、あとの2人はケトン食を継続できずに死亡という、大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座・萩原圭祐准教授らの発表がありました。肺がんのⅣ期患者の生存中央値が8~10カ月ですから、かなり効果があったわけです。

2011年8月からアイオワ大学とNIH(米国国立衛生研究所)が共同で、肺がんとすい臓がんに対するケトン食の効果を確かめる臨床試験を開始しました。残念ながらこの研究は、症例が集まらなかったのとコンプライアンスが悪かったということで2017年7月に終了となりましたが、このほかにもさまざまな「ケトン体によるがん治療効果」についての研究が進められています。(東洋経済「話題の「ケトン食でがんが消える」は本当か」)

と述べています。

本当にがんに効くのかどうか、まだ結論は出ていませんが、期待のできる代替療法だと思えます。

ただし、極端な糖質制限食ですから、医師の指導なしに行うのは危険です。特に以下の条件に当てはまる方は、より慎重に考えるべきです。

■糖尿病の治療として、経口血糖降下剤の内服やインスリン注射を受けている患者
■膵炎(診断基準を満たす)がある場合
■進行した肝硬変がある場合(肝機能の障害がある患者さん)
■腎機能低下がある場合
■長鎖脂肪酸代謝異常症の患者

『世界初の臨床研究で実証!』の真実

最初にあげた古川健司氏の『ケトン食ががんを消す (光文社新書)』には次のように書かれています。


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 こうした高脂肪、高たんぱく、低糖質のケトン食に、抗がん剤や放射線などの化学治療を併用すると、患者のがん細胞が縮小、消滅する確率である「奏功率」がアップすることも、私の臨床研究で明らかになりました。この食事療法は、3カ月の継続をベースに、実施の安全性が確認されている1年までを目処に行われます。参加者の臨床開始から3カ月後時点での病勢の中間報告によれば、PR(部分奏効)が6例、SD(進行抑制)が1例、PD(増悪)が2例となっています。血中の最高ケトン体数が1000μM/ℓを超えると、がんは縮小する傾向にあることが見て取れます。
 さて、この9例の1年後の評価はどうなったのでしょうか。3例がCR(完全寛解)、3例がPR(部分奏功)、1例がSD(進行抑制)、2例がPD(増悪) による死亡と、奏効率が67%、病勢コントロール率が78%という結果になりました。臨床対象者以外の免疫栄養ケトン食実施者も含めると(総勢18人が3 カ月以上実施)、その病勢コントロール率は83%にものぼり、免疫栄養ケトン食と化学療法の併用の有意性が、さらに明確に示されています。
ケトン食と化学療法、放射線を併用しているのですから、ケトン食だけの効果を判定することはできません。やるのなら、化学療法・放射線の患者と、それにプラスしてケトン食を実行した患者とを比較すべきです。
ステージⅣの患者でも数年元気で生存し、腫瘍もCTでは確認できないほどに縮小する患者はたくさんいます。古川氏のあげた症例が特別に良いというのではなさそうです。ケトン食でも多くの臨床試験もあるなかで「世界初の・・・」も読者を惑わす宣伝句です。
軽い糖質制限食から始めるのが無難かもしれません。

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