笑いでがんを治せるか

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笑いと免疫力の関係を調べる

「笑い」ががん患者のストレス軽減や免疫機能に与える影響を調べる、大阪国際がんセンターの実証研究の最終回を迎え、今年度中にもその成果を科学誌などで発表する予定です。題して「がん医療における定期的な『笑い』の提供が自己効力感や生活の質に与える効果の検証」。

吉本興業などの協力を得て、月2回程度、漫才や落語を見る前後で血液と唾液の検査を実施。患者にかかるストレスや免疫細胞の変化を調べるという。

がん患者のストレス軽減や免疫機能に、「笑い」が与える影響を調べる「大阪国際がんセンター」(大阪市中央区)の実証研究が24日、最終回を迎え、。研究結果は、今年度中にも科学誌などで発表する予定。

笑いが免疫機能を高めるという報告はこれまでもあったが、それを臨床的に継続して調べる試みだ。

研究における評価のポイントは二つあり、患者や医療者が主観的にどう感じるかを評価した上で、採血検査による客観的な評価を加える。

アンケート調査で「自己効力感」と「QOL指標」、血液検査で「免疫機能」を調べ、「笑い」が与える影響を評価します。ほかに血圧、脈拍を測定したり、表情や気分を調べる調査を行ったりします。主な比較はA群とB群で行います。研究に同意頂いた患者さんと医療従事者、お笑いの舞台を提供頂く演者のみなさん、大阪国際がんセンターの病院、研究所、事務局、そしてがん対策センターが一緒に、「笑い」のチカラを科学的に評価しようと真面目に取り組んでいます。

がん細胞を攻撃するナチュラルキラー(NK)細胞の活性が笑いにより上がるという報告があると指摘し、採血について、免疫機能が活性化した時に増加するNK細胞のような攻撃細胞や、免疫抑制細胞の数と機能の変化を調べるのが目的と話す。

25年前にもなんば花月で実験

「笑い」の効用について、日本でいち早く注目をしたのが、岡山県の医師、伊丹仁朗氏である。

1991年、大阪の「なんばグランド花月」において、19人の患者を集めて、3時間笑った後の免疫力の変化を調べました。開演前後の採血で、NK細胞の活性状態を調査したところ、全例においてNK細胞の活性値は上昇または正常化して、低下例はみられなかった。しかもこの効果は、即効性という点において免疫療法剤の注射よりはるかに強力であったとのことです。

笑いには、短時間で免疫力を正常化させる効果があることが分かります。

笑いと治癒力-ノーマン・カズンズ

笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)

笑いと治療との関係について書かれた古典的な名著と言えば、、ノーマン・カズンズの『笑いの治癒力』です。

ノーマン・カズンズは、不治の病と言われた膠原病から、ビタミンCと「笑い」を武器に、五百分の一という奇跡的な回復をした人です。有名な書評誌『サタデー・レビュー』の編集長であり、核兵器廃止運動、環境汚染反対運動、世界連邦運動の指導的活動家でもあります。1956年に広島の「原爆乙女」25人をアメリカに招き、整形外科手術をうけさせたことで、日本でも知られるようになりました。

彼は、同時に腹を抱えて笑えるようなテレビ番組を看護婦に映写してもらい、看護婦が集めてきたユーモアの本を読むことを続けます。「笑い」は膠原病特有の痛みを和らげることを発見します。

カズンズによれば、カントは『純粋理性批判』で笑いについて次のように書いているそうです。「大声での笑いは、もっとも重要な肉体の過程を促進することによって、健康観、すなわち腸と横隔膜とを動かす情感、つまりわれわれの感じる満足の内容を成す健康観を生み出し、われわれはそれによって、精神を通じて肉体に到達し、精神を肉体の医師として使用することができる」。

この本で彼が言いたかったことは、『患者の責任』ということです。病気に対して人体は「治る能力=自己治癒力」を持っている。それを信じて正への意欲を持ち続けなければならないということ。

「ビタミンCと笑い」は、一つの選択肢であり、彼もビタミンCが全ての病気を治すなどとは言っていません。笑っていれば医者の治療などは必要ないとも言っていません。しかし、「笑い」すなわち精神が肉体に影響を及ぼしうることがあるということは、今日では医学界でも認められるようになってきました。

彼が治ったのはプラシーボ効果なのかもしれません。しかし、プラシーボ効果で治って、どうしていけないのでしょうかと問いかけます。人類は長い間、心のありようが病気を治すことができるということを信じてきたし、実際に治療効果があったのです。むしろ医学が「治してきた」と信じている大部分はプラシーボ効果なのかもしれません。世界で大量に飲まれているアスピリンでさえ、その効用の原因は分かっていないのですから。

浜松医大における実験では、予後が6ヶ月未満と告知されたがん患者28例を対象に、漢方学的な補剤を用いてエネルギー補給を行ない、また、その患者が生きてきたプロセスを積極的に評価し、人生に十分な意味と価値を与えられることに意識を向けさせて、患者固有の社会的役割を遂行させるというような指導がされました。
 
その結果、平均生存期間は18.4ヶ月と、推定生存期間の3倍以上長かったとのことです。また、この28例のうち、美しい自然に心を打たれるなど、がんになるまでにはなかった感動的な体験(至高体験)があった6例では、他の22例と比べてストレスホルモン(コルチゾール)の指標、抗コルチゾール物質(DHEA-S)、生活の質(QOL)、生存期間などの項目で有意に良好な指標が示されました。DHEA-Sは免疫力や生体の恒常性の維持を改善することが知られています。

これは『夜と霧』の作者であり、ナチスの強制収容所から生還した精神科医、ヴィクトール・フランクルの言う実存的な気づき(生きる意味への目覚め)によって脳が刺激・活性化され、DHEA-Sの分泌が亢進し、QOLと生存期間が改善されたものと考えられています。

25年前の伊丹医師の実験と比較して、今回の大阪国際がんセンターの実験が、どのような結果になるのでしょうか。楽しみです。ただ、がん患者はそんな結果やエビデンスを待たずとも、笑うことには副作用がないのだから、笑えばよいのです。


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笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会) 笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)
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