人生は借用書 返済期限が来たら返せば良いだけ

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転移・再発したがんでは、抗がん剤は「延命効果」と「症状の緩和」が目的です。治ることはありません。しかし4割以上の患者は、いずれ抗がん剤で腫瘍が消えると、間違って受け取っています。

治ることばかり考えている患者もいる。頭の中は、きっと堂々巡りだ。しかし、

一日中がんのことばかりを考えている患者からは、がんは逃げていかないよ。だって居心地が良いのだから。

釈迦が説く「生老病死」から人間は決して免れることができないのだから、たとえ悟りをひらいた名僧、高僧だって死は恐怖であるはずだ。

しかし、死はやってくる。受入れたくなくても受入れざるを得ない。治らないがん患者にとっては、名僧、高僧のような悟りの心境に達する時間もない。まさかがんの告知と同時に修行をはじめるわけにもいかない。

親鸞、一休、良寛、西行、空海、一遍、最澄、それに鉄舟と山頭火。彼らが迷い悩みながら辿り着いた人生の終い方とはなにか?

臨済宗の高僧 仙厓は、死の間際に「死にとうない」と呟いたそうな。生の中に死があり、死のなかに生があり、両者はひとつと説く臨済宗である。弟子たちはおろおろしたに違いない。正直な坊さんだ。

一度地獄を見た者の生き方には二通りある。「生」にすがりつくか、助かったいのちは余生として「開き直る」か。

「生」にすがりつけば、二度と地獄に落ちまいと必死の努力をする。だが、眼下の地獄を見すえるこの生き方は、常に地獄の影がつきまとうため、心の平静は得られまい。開き直ったものは眼下の地獄に目もくれない。失うものはないと腹をくくれば、恐いものはない。

僧籍を剥奪された親鸞は、己の運命に絶望もせず、わが身の不幸を嘆くこともせず、逆境を受入れ肯定し、現状に身を投じていった。逆境に対して「今に見ておれ」と踏み台にする生き方は、「今ある自分」を否定することである。親鸞にとって死を受け入れるとは、臨終の瞬間まで「今を生ききる」ことであった。

名僧たちは自らの死をどう受け入れたのか (青春新書インテリジェンス)「人生は借用書」と喝破した一休、自分の生きてきた人生そのものが形見だと遺した良寛。出家することで悟りをひらきたいと思うその心が「執着」であり、それすらも捨てよという西行。「明日」を捨てよ、捨てて捨てて、その果てに平静があるとする一遍。

「明日」のことを考え、何かを「獲得」しようとするから悩みが生じるのである。生も死も、地位もお金も思い通りにならないのがあたりまえ。親も子も、伴侶も思い通りにはならない。自分の身体でさえ同じこと。コントロールできないことをコントロールしようとするから悩みが生じる。

現代医学には限界がある。治るものなら直す努力をすれば良い。治らない病まで治そうとするから迷いが生じて、オタオタする。希望を持つのは良い。しかし、いつしか「希望」が「執着」になってしまあてはいないか?

一遍はこう言う。「死ぬときは死ぬがな。それまでは生きているがな」そして、「明日」への思いを捨てさえすれば、「すべては捨てられる」

捨てれば、身軽になって、「ただ今のこの日」に命を集中して生きられる。


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霊魂や脳科学から解明する 人はなぜ「死ぬのが怖い」のか (講談社+α文庫)この身体は借り物。借用書には「必ず返すべし」とは書かれているが、「いつ返せ」とは書かれていない。返す期限は誰にも分からない。身体もがんも「複雑系」だから、原理的に「未来は予測できない」。それを予測しようとするから要らぬ悩みが生じる。返す期限が来たら返せば良い、ただそれだけのことなんだよ。

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