がんの自然退縮はどの程度あるか

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がんの自然退縮は思いのほか多い

治らないがんを宿した患者なら、誰しも「自分のがんだけは奇跡的に治って欲しい」と願うものです。そして、がんの「自然治癒」「自然退縮」という現象が少なからずあるのですから、「運が良ければ自分も」と願うのも当然です。

かつてムラキテルミ氏が肝臓がんで余命3ヵ月を宣告され、石原メソッドや茹で小豆で完治したと、本も出版して話題になりました。これなども稀な自然退縮の例だろうとおもいます。小豆や石原メソッドが効いたのかどうかは疑問です。なぜなら、彼女に続く自然退縮が出ていないからです。

多くの医師がこうした自然退縮例を見ていると言います。Google Scholarで「がん 自然退縮」で検索すると、207件という結構な数の論文が出てきます。確かにがんの自然退縮は思った以上に存在するのです。

どのくらいの頻度で起きるのか

大場大医師は、その著書『東大病院を辞めたから言えるがんの話』の中で、

最近、日本語論文でも、がんの「自然退縮」についてまとめられた良質なものが報告されています。(Jpn J Cancer Chemother 2013;40:1475-1487)それによると、2011年の一年間に日本だけで63例が報告されているとのことです。

また、詳細なデータを検討した結果、がん患者約1.2万人に1人の割合で「自然退縮」が発生しているとのことです。

と書いています。森山紀之医師(東京ミッドタウンクリニック健診センター長)は、

医学的には「自然退縮」と呼び、6万~10万人に1人の確率で起こるといわれています

と説明しています。腫瘍内科医の勝俣範之氏も、がんの自然退縮について、

がんの自然退縮は確かにあるようで、これまで世界中で500例以上、年間20人ほどの報告があります。進行がんでも報告がありますし、ほとんどの癌腫で報告されています。
原因はまだ明らかになっていませんが、自然に遺伝子異常が修復されたからではないかという説があります。

と書かれています。

また、日本の心身医学の創始者である九州大学の故池見酉次郎教授は、中川俊二博士とともにがんの自然退縮例を研究しました。この研究により池見教授はストレス学説で有名なハンス・セリエ博士のセリエ賞をとられたのですが、がんの自然退縮は500から1000例に1例はあると考えられると述べています。

このように、500人から10万人に1例と幅が大きいのですが、これは自然退縮を真剣に研究してはいないことの証しでしょう。

どうすれば自然退縮が起きるのか

正直、これは分かっていません。しかし、どうやら精神面も含めた生き方の見直しが自己治癒力を高め、その結果として、なかには自然退縮が起きる患者がいるということのようです。

池見酉次郎教授や中川俊二氏らは、

74人のがんの自然退縮がみられた患者さんで、精神生活や生活環境を詳しく分析できた31人をまとめています。31人中23人(74パーセント)に人生観や生き方の大きな変化があったとされています。その23人の中7人はかねてから人間的な成長度の高い人や真に宗教的な生き方をしてきた人たちであり、がんの告知がきっかけになり、永遠の命へのめざめが起きたそうです。5人は信仰をもっていた人たちで、がんを宣告されることによって信仰の対象としていた教祖や神仏に自分のすべてをまかせきるという全託の心境になったとされています。5人は家族からのサポートや周囲の人の温かい思いやりに包まれて主体的な生きがいのある生活へ転換が起きた人であり、6人は生きがいのある仕事に打ち込んでいった人だそうです。このように、約4分の3の人では、生きがいや生き方に大きな変化があったときに、がんの自然退縮があったというのです。


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と報告し、これらの人たちを「実存的転換や宗教的目覚めがあった人」と分類しています。

「実存的転換」の意味は、中川俊二氏の言葉を借りると、『今までの生活を心機一転し、新しい対象を発見し、満足感を見出し、生活を是正するとともに残された生涯の一日一日を前向きに行動しようとするあり方』と説明されています。

私も同様に、長期生存している患者はの特徴は、

●余命3ヵ月と言われようとも、うろたえていない
●平然と死を直視している
●自分のことよりも、他人のことを考え心配している
●自然や美しいものに関心を示し反応している

ではないかと感じています。

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